ボンジュールと書いて、こんにちは!パリ在住コトカチャレンジクラブのヒロミシュリンヌです。
フランスのシャンパンメゾンで3年間、日本と中国市場営業をしていたヒロミシュリンヌが、第一回【概要編】、第2回【用語編】、第3回【データ編】、第4回【実践編】、第5回【グラス選び編】とシャンパン連載を書き進めるうちに、どうしても【番外編】とし、書き綴っておきたくなった、シャンパンを飲むと思い出し、そして人生ながきにおき、心ゆくまで飲みつくそうと誓いを立ててしまう個人的な思い出をお話しします。
なにごとにも、なんどきにも、人生後悔のないようにと。
そして、みなさんがいつまでも健康で、おいしく、幸せなシャンパンを飲み続けられますようにといつも願っています。
もっとシャンパンを飲んでおけばよかった!
Wikipedia によると20世紀における最重要人物の一人であり、経済学者の代表的存在で、有効需要に基いてケインズサーカスを率いてマクロ経済学を確立させたという、バリバリの経済学者のケインズ。
そんな彼の有名な言葉を教えてくれたのは、当時ロンドンに住んでいた友人の直ちゃんからでした。
「当時」といわなくてはいけないのは、その数か月後に直ちゃんは交通事故で34歳の若さで、突然命をおとしてしまったのです。
直ちゃんとの出会い
私たちが出合ったのは’94年、お互い22歳。当時、私は名古屋でOLをしていて、直ちゃんはロンドンのアートスクールに通う美大生でした。
私の初めてのロンドン旅行の際、共通の知り合いに紹介してもらいロンドンで出会い、地元も同じ、年も同じということもありすぐに仲良くなりました。
当時の直ちゃんは、日本にぼんやりと住んでいた私から見て「外国に住んでてかっちょいいな」だけではなく、「魅力のある人とは、こういう人のことをいうんだな」と今までに出会ったことのないその魅力と雰囲気にすぐに憧れました。
やせっぽっちで、顔もミックジャガーに似ていて、いわゆる美人ではないけれど、ほかの人にはない雰囲気を漂わせ、強い光線のような魅力がビンビン解き放たれているような女の子。
今でも思い出すけど、その隠しきれない、醸し出される魅力はすごかった。
そして私はと言えば、こうするべき!こうあるべき!という社会の圧力に疑問を持つこともなく、でもだた無意識に窮屈に感じ、なにかずっとながいあいだ周囲に違和感を抱き、でもそれが何かわからないまま、むやみやたらただただ遊んだり、恋をして過ごした時代。
そんな私はロンドンに遊び行った時に出会った直ちゃんは強烈でした。
そして、せまい世界で人知れず苦しむがんじがらめの私の価値観を、そのふるまいから自然にもっと自由でいいんだよって教えてくれたのも直ちゃんです。
思い出話をひとつ
ある日のロンドン。直ちゃんと一緒に出かけようとなった時、直ちゃん、ひょいっとそこらへんいあったてきとうなスーパーのレジ袋にお財布やら定期やらを入れて、それだけ持って出かけようとしたのが、私にとってすごい衝撃でした。
「え~!今からセンターまでお出かけするのに、それゴミ袋じゃん!バック持たないの?百歩譲って、そのレジ袋持って出かけたとしても、それサブバックじゃないの??」
平成初期の私は、スーパーで買い物をした時のレジ袋は「買い物をした時にもらうもの」。
そしてその後その袋は「ゴミ袋になり捨てられるもの」。
それ以外の発想がまったくなかった。
でも直ちゃんにとっては、袋の用途は「モノを入れて持ち歩き、運ぶことができること」。
なら、スーパーのレジ袋でじゅうぶんなんです。
こんな、シンプルな発想、考え方の単純化など彼女から自然に教わりました。
そして、直ちゃんと私の共通点はお酒が大好き、そして共に強いところ。大勢で飲んでいてて、皆がつぶれていくなか、最後まで飲み続け、夜な夜ないろいろな話をしました。
大好きなステキな友達でした。
2005年夏の出来事
そんな直ちゃんを訪ねて、2005年の夏もいつものようにロンドンに遊びに行きました。
当時の私はユーロスターでロンドンから2時間半のパリに住みすでに9年。フランス人と結婚し、2歳になる息子がいる身になっていました。
直ちゃんもいろいろも模索した後、絵画でもなく、彫刻でもなく、写真で前に進もうと決めたところ。
その夏のロンドン滞在中のある夜、いつもの如く多めに買い込んだはずのワインもビールも飲み尽くし、シンク下にある料理酒を飲むか、香水もアルコールでできてるね。なら飲んでみるか!なんて、バカ話に花が咲き、楽しく過ごしていました。
ほろ酔いで気持ちよいところで、直ちゃんが本棚から1冊を取り出し、最近読んでよかったよ~っと偉人の名言集みたいな単行本を貸してくれました。私はぺらぺら~っとページをめくりながら、でさ、結局どれが一番心に残ったの?って聞いたところ、返ってきたのが冒頭の、
もっとシャンパンを飲んでおけばよかった!
直ちゃんらしぃ~!なんてげらげら大笑いして、次会う時に本返すね~と私はパリに戻っていきました。
それなのに、その年のクリスマス前に、交通事故で亡くなってしまうなんて。。
借りっぱなしの本とシャンパンと私の叫び
その時、借りた本は貸出人に戻るすべもなく、今でも本棚に入ったまま。そして私は今でも、いつまでも、
もっと一緒にシャンパンを飲みたかった!
もっといろんな話をしたかった!
もっと一緒に成長したかった!
と、思い、それから
あなたを思って、シャンパン飲むから!!
っと叫ぶ!
あっ、言い訳に聞こえます?
近からず、遠からず。。
飲みたいと思った時は心に従おう!
でもね、みなさんも、ケインズよろしく、
もっとシャンパンを飲んでおけばよかった!
などと思わずにすむように、
飲みたいと思ったら、その心の思いを聞き入れて、
心ゆくまでおいしいシャンパンを味わってください。
そう願っています。